FCR-VITA Rd.3
〈雨の戦い〉
富士スピードウェイを舞台とし、全4戦で争われるFCR-VITAも第3戦を迎え、いよいよ後半戦に突入する。
その人気は留まることを知らず、開幕戦のエントリーは31台だったが、MEC 120として開催された第2戦は52台のうち35台がVITA-01だった。
そして今回は、VITA-01だけで41台! スプリントで、いずれフルグリッドになる日も、そう遠くはなさそうだ。
さて、今回の話題のひとつが、
開幕2連勝の徳升広平選手(#58アポロ電工フジタ薬局 綾代理VITA)が
3連覇に王手をかけていること。勝てば文句なしの決定とあって、もちろん当の本人も、それを狙っているに違いない。
そして勢いに乗る徳増選手にストップをかける者は現れるか? 今回も見どころの尽きぬ一戦になりそうだ。
[予選]
練習走行が行われた金曜日はあいにくの空模様だったが、土曜日にはお天道様もご機嫌を取り戻してくれたかと思われた。
とはいえ、未明まで降り続いた雨は予選まで路面に一部、水を残していた。
このところのセオリーとしては、早々とコースインして、早々にアタックを開始すること。
だが、この難しいコンディションだと、路面は後半になってほぼ水も履けて、状態は良くなっているはず。悩ましいところではあったが……。
実際、三浦愛選手(#117 Team M VITA)や#114翁長実希選手(#114 RSS VITA)、上野大哲(#35恒志堂レーシング CLASS VITA)といったあたりが、すぐピットを離れず間合いをやや開けるも、これは完全に裏目に出てしまう。というのは突然雨が降り始めたからだ!
計測1周目のトップは、前週の筑波で初優勝を飾ったばかりの山本龍選手(#87おさきにどうぞ☆VITA)ながら、その後のタイムが伸びず。
計測2周目に入って、すぐトップに立ったのは、中澤卓也選手(#47 MOST-HM VITA)で2分3秒617をマークすも、
直後に上回ってきたのが兒島弘訓選手(#32ゼンカイレーシングVITA)で、2分3秒334を叩き出す。
3番手は徳升選手で2分3秒825、
4番手がルーキーの富下李央菜選手(#225 KTMS VITA)で2分4秒017を記す。
そして実質、計測1周目でありながらも、三浦選手が2分4秒152で5番手、翁長選手が2分4秒685で6番手に食い込んできたところで、雨は勢いを増してタイムアップを困難な状況に。
上位陣のほとんどがチェッカーを待つことなく、ピットに戻って走行を終了。
なお、7番手以下は渡会太一選手(#51 BRM VITA)、大野俊哉選手(ビーンズスポーツSPM☆VITA)、藤原大暉選手(ACELINES VITA)、そして山本選手の順となっていた。
ポールポジション:兒島弘訓選手(#32ゼンカイレーシングVITA)
「チームの皆さんから『すぐ雨降るよ』って聞いていたので、なるべくアクセル、ブレーキでずっとタイヤを優先的にタイヤ熱で温めて、2〜3周で出すというのを決めて、ポジション取りしていました。
でも、けっこうゴチャゴチャしていて苦労したんですけど、1アタック目は引っかかって、2アタック目でなんとか。満足はしていないんですけど、まともなラップが刻めたかな、というところで雨が来てくれました。
チームのおかげですね、本当に。昨日までドライのフィーリングが悪くて、いろいろ一晩悩んで、いくつか変更してきましたが、その感じで言うと悪くはないと思っています。なので、決勝も逃げ切れるように頑張ります」
予選2番手:中澤卓也選手(#47 MOST-HM VITA)
歌うシンガーソングドライバー♪
その速さはホンモノ✨
「安定しない天気でしたが、雨量が少ないタイミングでチームが車を出してくれました。
本当に昨日からすごくいい車を作ってくれた、チームに感謝です。
決勝は天候に左右されないように、あとはドライバーがヘマしないように。でも、開幕戦でVITAは、雨を経験していて、そこで得たことはすごくプラスになると思うので、落ち着いて行きたいと思います。フロントローは今回が初めてです」
予選3番手:徳升広平選手(#58アポロ薬局フジタ電工 綾代理VITA)
▶︎このマシンでこのタイムは、圧巻!です笑✨
「この結果には満足しています。あとは抜くだけで、なんとか今日、チャンピオンを決めます!車はちょっとつらいですけど、なんとか頑張らせてもらいます。
実は毎回、車を変えているのは、優勝した車じゃ出ちゃダメだというチーム内での縛りがあるので。初めて乗る車でも、しっかりセットできるように、セッティング能力も鍛えさせてもらっています」
予選4番手:三浦愛選手(#117 Team M VITA)
「2周目から雨がポツポツ来ちゃって、セクター3から濡れていたので、タイム出せなくて。
みんな飛び出して、イエローもけっこう出ていたので、本当にまともなアタックができませんでした。この天気は読めませんでしたね、予報ではやむということだったのに。たぶんサバイバルレースになるので、決勝では生き残ることを考えて。でも、4番手につけられたのは良かったです。
車は開幕戦より第2戦、第2戦より今回と、どんどんいい状態になっていますし、雨も自信あるので頑張ります」
予選5番手:翁長実希選手(#114 RSS VITA)
「雨が急に来ちゃって、台数も多かったですし、ピットも後ろの方だったので、クリアで走りたかったから、ちょっと半周待って出たんですけど、タイミングが悪くて。ベスト出た周も目の前でスピンされちゃって、それでちょっとロスもあったので、あまりいいタイム出せませんでした。でも、車のフィーリングはすごく良かったです」
予選6番手;富下李央菜選手(#225 KTMS VITA)
ペナルティを受けたけど、新星現る!
今後の走りに注目です✨
「すぐコース出ていって、早いうちにタイム出しちゃったほうがいいと思って、最初の4周ぐらい頑張って走っていました。ハーフウエットでしたから、車というより、自分の乗り方という感じで、そこに意識を置いて走っていました。ピットロードの速度違反で2グリッド降格してしまいましたが、4番手のタイムが出ていたので、そのまま上位でゴールできたら嬉しいと思っています」
[決勝]
雨は予選の後にやんで、今度こそ完全ではないにせよ路面が回復状態にあったから、決勝ではドライタイヤが履けるかと思われたが、逆にまた降り始めてしまう。なお、レースは10周での戦いだ。
注目されたスタートで、ポールの兒島選手が出遅れてしまい、中澤選手との間を中央突破していったのが徳升選手だ。
しかし、しっかりイン側のラインをトレースしていた中澤選手がトップで1コーナーをクリアし、逆に徳升選手は軽いオーバーランが。一気に3番手まで上がってきた翁長選手も立ち上がりで飛び出すも、加速中だったこともあってポジションを守ることになる。4番手は兒島選手だ。
VITAでは初めてトップに立った中澤選手ながら、コカコーラコーナーで痛恨のオーバーシュート。
これで徳升選手と翁長選手、兒島選手がひとつずつ順位を上げる。
そして1周目を終えた直後のストレートでは、翁長選手が徳升選手をかわしてトップに立つ。その後も翁長選手と徳升選手は、兒島選手を引き離しつつ、激しくトップを争い合う。
その後方では、2周目に中澤選手をかわしていた三浦選手、
そして1周目のうちに6番手まで上がっていた藤原選手の攻防が熾烈を極めていた。藤原選手の強烈なプレッシャーに屈したのか、中澤選手は4周目の1コーナーで痛恨のオーバーラン。勢いに乗る藤原選手は、最終コーナーで三浦選手も抜いて4番手に躍り出る。
5周目の1コーナーで翁長選手に徳升選手が迫り、ここでの逆転はかなわなかったものの、2コーナーで並んで続くコカコーラコーナーでパス。次の周にはコンマ8秒、そのまた次の周には1秒にまで差を広げていたから、徳升選手が逃げ切り体制に入ったかと思われた。
しかし、その野望を打ち砕いたのが藤原選手だった。6周目の1コーナーで兒島選手を抜いて3番手に立つと、ファステストラップとなる2分17秒610を叩き出し、なおも前のふたりに近づいていく。まず翁長選手を8周目のコカコーラコーナーで仕留め、9周目の100Rではバックマーカーの処理に徳升選手が手間取る隙をついてトップに浮上! 徳升選手は翁長選手にもかわされてしまう。
逃げ切って藤原選手が優勝を飾り、
コンマ5秒差で続いた翁長選手が2位。
悔しい3位の徳升選手だったが、これで3連覇を達成した。
4位は兒島選手で、
三浦選手は単独の5位。
そして6位には三浦選手にプレッシャーをかけるまでには至らなかったが、
予選11番手だった有村将真選手(#7ワイルドキャットVITA)が。
中澤選手は無念の7位で、
8位は予選12番手から上野選手が獲得。
9位は大野選手で、
10位は平川真子選手(#44 RSS VITA)が8台抜きを果たしていた。
優勝:藤原大輝選手(#39 ACELINE VITA)
「予選は本当に場所が悪くて。でも、決勝はスタートして1コーナーさえ抜けられれば、あとは順繰り、順繰り行けると思っていました。実際、どんどん前に行けました!
ただ、雨の前のオーバーテイクの仕方が、まだ全然なっていないので、そこは今後の課題ですね。
まだ並んで入っていくことができなくて、相手を惑わせて追い込んで抜くとか、それはできるんですが、これからレベルアップしていくカテゴリーでは通用しなくなっていくので、そこでどう戦うかが今後の課題ですね。
それにしても神がかっていましたよね!? でも、ドライだったら、たぶん勝てなくて。セットアップパーツがなくて、限られたパーツの中でやっていたので。良かったです、優勝できて!」
2位:翁長実希選手(#117 RSS VITA)
「前半ペース良かったですけど、後半はどんどん、どんどん厳しくなっていって。後ろのペースがいいのは分かっていましたが、それでも最後までチャンスを狙っていましたけれど、一歩及ばず、負けましたという感じでした」
3位:徳升広平選手
(#58フジタ薬局アポロ電工 綾代理VITA)
「チャンピオン、決まりかな? 分からない(笑)。必死でしたし、けっこうきつかったですね。でも、無事に表彰台行けて良かったです。藤原選手はすごく早かったですね、彼を讃えたいと思います」
「キッズカートの講師でも大活躍の徳升選手。
来年は高山短大でチーム体制の中、さらに大活躍志そうです。
4位:兒島弘訓選手(#32ゼンカイレーシングVITA)
「スタートでミスっちゃったのが、いちばんでしたね。スタート練習の時に、回転合わせて2速発進でうまくいったのに、フォーメイションで1周回ってきてタイヤの温度が少し上がっていたので大丈夫かなと思いつつ、少し回転高めでスタートしたんですけど、それが良くなかったみたいで。そこからホイールスピンして1速だったらリカバリーできたんですけど、2速だから回転落ちたらエンストすると思ったので、そのまま踏み続けて、その時点でもう……。セクター3でトラクションがかからなくて、ペースが上がりませんでした。リヤがドライのセットのままだったんですが、それは自分の判断だったので、良くなかったです」
5位:三浦愛選手(Team M VITA)
「ちょっと今回、噛み合わなかったというか、ペースが上がらなくて。車的にも苦しかったというか、一本足りないなって感じでした。実際、ドライセットのまま行ったり、そんなに雨対策をせず行ったりした中、意外と降ってきたので、そこも読みが甘かったという……。あと一歩、詰めが甘かったな、という教訓のレースになりました」
6位:有村将真選手(#7ワイルドキャットVITA)
「予選が11番手で、スタートがうまく決まったので、そこで4ポジション以上アップできて、前の接戦になっていたので、そこを様子見ながらじゃないですけど、落ちてくるところをこっちもミスなくできて、しっかりストレートでオーバーテイクできて6位まで入れたので、とりあえず良かったです。
僕、雨男なんで、雨ばっかり練習しているんです(笑)、雨が得意というよりも!」
FCRーVITA。
フォーミュラマシンと同じコンセプトで生まれたVITAは、
マシンの操縦性の基本をしっかりと身につける事ができる。
最近ではチーム体制が増え、レジェンドから若手まで、テクニックのレベルアップが著しい。
ドライビイングのみならず、整備もしっかりと学べるのが魅力でもある。
これからは学校の教材として、チーム体制も増えて来そうだ。
静岡自動車大学校の皆さま。
先生も学生の皆さんも大活躍です!