鈴鹿クラブマンレースFinal Round CS2
エントリー台数も徐々に増え、着実に盛り上がりの傾向にあるCS2。2019年最後の戦いには、13台がエントリーすることとなった。
チャンピオン獲得の権利を残すドライバーは2名。開幕2連勝の大文字賢浩選手を、前回のレースで初優勝を飾った松本吉章選手が、5ポイント差で追いかける格好となっている。余談ながら、もし松本選手が今回のレースで優勝し、大文字選手が2位の場合、同ポイントで並ぶばかりか、上位入賞回数でもまったく一緒。その場合は最終戦の結果が優先されることとなっているが、果たしてそうなってしまうのか、それともまた違った結果となって、すっきり決まるのか……。注目される状況となった。
土曜日に行われた予選は、サーキット上空を灰色の雲が覆い、しかし、これは雨雲ではなさそう。日差しを遮ったこともあり、低い温度と澄んだ空気は、まさに絶好のアタック条件となっていた。
その予選でまずトップに立ったのは、金久憲司選手だったものの、「練習で絶好調だったので、張り切って行ったら、かえって破茶滅茶になってしまって」と、その後の伸びを欠いてしまう。
逆に計測2周目に2分13秒311をマークして、ダントツのトップに躍り出たのが松本選手だった。その次の周に川島勝彦選手が2分13秒726、大文字選手が2分13秒922をマークするも、松本選手には一歩及ばず。それでも、さらなるタイムアップを狙っていったものの、スプーンでストップした車両があり、赤旗が提示されてしまう。
再開後に上位でタイムアップを果たせたのは、松本選手のみ。2分13秒073をマークし、あわや12秒台突入かと思われたものの、そこでチェッカーが振られてタイムアップ。
大文字選手は、再開後は走行せず。その結果、ポールポジションを松本選手が獲得し、川島選手、大文字選手、そして金久選手の順で続くこととなった。
「タイヤのいい、最初にアタックして決めました。その後はほとんどアタックできるラップがなかったですね。赤旗と、その後も黄旗が出ていたので。最後にもう一発? 知らなかったです、気負わず行ったのが良かったのかなぁ(笑)。あまりポイントとかチャンピオンシップを意識せず、優勝することだけ考えて決勝に臨みます。その後に結果がついてくるでしょう」(松本選手)
「思ったよりタイムが出て、13秒なんて昨日は考えられないタイムだったんだけど、ニュータイヤが良かったのかな、それとも気合入ったのか。それでも詰まるような感じがあって、単独で走れなかったから、感触としてはもうちょっと。でも、満足です、自分では。(タイトル争いの)邪魔はしないように(笑)」(川島選手)
「再開後、残り7分だったので、もう1回温めて、トライは無理だと思ったので(走るのを)やめました。タイヤももったいないし。行かなくて良かった。それにしても(松本は)速いなぁ。昨日も速かったし、今日も速かったし、明日も速かったらどうしよう(笑)。まぁ、一生懸命頑張るけど、彼が勝ったら勝ったで面白いんじゃない? 一緒にバトルできるのが楽しみ。金久や川島君も速いので、レースは面白いんじゃないですか」(大文字選手)
日曜日の鈴鹿サーキットは、さわやかな青空に恵まれ、まさに絶好のレース日和となっていた。最終戦に相応しいシチュエーションになっていたのは間違いなく、見応えのあるバトルが繰り広げられるものと思われていた。
得意のスタートを決めて、オープニングラップのうちにトップに浮上していたのは大文字選手。
これに松本選手が続き、川島選手をヘアピンでかわした金久選手が3番手に。
コントロールライン上ではコンマ2秒差で、松本選手を大文字選手が従えて、ホームストレートを駆け抜けていく。しかし、その直後に……。
松本選手と大文字選手がストレートエンドで追突!
2台はガードレールに激突した後、ストレート上に戻ってくる。
これを間一髪、金久選手はかわしたものの、川島選手が避けきれず。
3台がコース上に停止し、即座に赤旗が提示される。
この時の状況を、金久選手が語る。「なんか予感がしていたんですよ。だから、ちょっとだけ引いて。練習からタイム出ていたので、その後に追いつく自信もあったので。そしたら案の定……。僕はストレートの真ん中寄りを走っていて、戻ってきたから、その直前にもう一回アクセル踏んで、僕はすり抜けられたけど、川島さんはアウト側を走っていたからドカーンといって。第六感が働いて良かったです」と。
クラッシュした3人のうち、大文字選手は大事を取って病院に搬送されたが、意識もはっきりしており大事には至らず。そして、大文字選手の2016年、18年に続く、3度目のチャンピオン獲得が決定した。
再開後のレースは、労せずしてトップに立った金久選手のひとり舞台。
リスタートを決めて、1周だけでベンソン・リン選手に1秒近い差をつけ、その後もアクセルを緩めず周回を重ね、最後はほぼ6秒もの差を、ファステストラップ2分14秒962への更新とともにつける圧勝となった。
リン選手もやがて単独走行となり、その後方では激しく3番手が競われた。
まずは大山正芳選手が先頭を走り、その後方につけたのがTOMISAN選手。
だが、大山選手はフォーメイションラップにスタート手順違反があり、ドライビングスルーペナルティが命じられていた。5周目に大山選手をかわすも、のちに黒側が提示されてしまう。
続いて大山選手にはスタートに出遅れ、ほぼ最後尾まで後退していた水本吉則選手が迫り、
7周目には逆転に成功。水本選手が表彰台の一角に上がっていた。
最終戦を見事優勝で飾った金久憲司選手
「勝つには勝ちましたが、力を抜くと(スキルスピードの)百田(義弘)さんに怒られるので。少しでも力抜いたら、発狂するし、『何やってんや〜!』って(笑)。
なので、最後まで予選の感覚で走っていました。スキルでやるのは、けっこうプレッシャーかかる! 優勝は2001年のF4以来で、このクラスでは初めて。
昔みたいに自信満々で走れず、まだ感覚は戻っていませんね。
もっと練習が必要です。どれだけ行けるか分かりませんが、来年もう1年は頑張ろうと思っていますので、みなさんよろしくお願いします」(金久選手)
記事:秦 直之さん