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11/17、18 KYOJO CUP Round4
2018/11/19 レポートKYOJO最新情報

平川 真子選手、初優勝!

I最終戦は1台が出走を取り消し、12台のエントリーとなったKYOJO-CUP。日曜日の富士スピードウェイは上空に灰色の雲こそ浮かべていたが、終日ドライコンディションは保たれた。

温度も低く、レコードタイム更新には絶好の状況となっていたが、期待された小山美姫は、土曜日のFCR-VITAで使用したユーズドタイヤでの走行であり、また換装したエンジンが本調子でないこともあり、木曜日の練習走行で記録した1分58秒台の到達はならず。終盤にはそれまでの単独走行から、あえて集団の中に身を置き、スリップストリームを利用してタイムアップをはかろうとしたものの、うまくタイミングが合わず。それでもひとり2分を切る、1分59秒510をマークした。

 小山が終始トップにつける中、序盤の2番手は池島実紅だったが、ちょうど折り返しのあたりで平川真子が逆転。2分0秒360を記し、0秒446の池島、そして0秒822を記した山本絵里子の順で続いた。

小山美姫(ポールポジション)

「ストレートが遅いので、最後スリップストリーム使おうと思って、1回ピットインした後にうまく合わせたつもりが、前の方がコーナーでミスして追いついちゃったり、最終コーナーを立ち上がって、『うまくいきそう』と思ったら、ピットに入っちゃったりして、もったいなかったですね。いいところ取りするにも、相手との距離感が大事だし、使う相手とのタイム差、どこが速いとか把握していないと難しいというのが分かりました。みんなと走ることは、練習でもあまりなかったので、またひとつ勉強になりましたし、レコードのことは諦めていたというか、もう気持ちを切り替えて、決勝を1番で帰ってくることに専念します」

 決勝では得意のスタートを決めた平川が、小山を抑えて1コーナーをクリア。だが、小山は少しも遅れることなく平川に続き、池島と山本とともにオープニングラップのうちに後続を引き離して、トップグループを形成する。ストレートは厳しいと語りながら、最終コーナーでしっかり間合いを取って、まるでお手本のようなスリップストリームを使って、小山は早々とトップを奪い去る。そのまま小山が、いつものように逃げていくと思われたのだが……。

 4周目に入ったところで、コントロールタワーに黒旗とDのサインが1と10のゼッケンとともに提示される。小山と5番手を走行していたYuri Hayashiに対し。グリッドからはみ出していたのが原因だ。「やってしまったのは、グリッドに着いた時、分かりました。バックしてもペナルティなので、もうどうしようもできず……」と小山。やむなく6周目にピットに進み、それまで5秒以上のリードをつけていたが、大きく順位を落とすことに。

 その直後にアクシデントも発生。2コーナーで池島を抜いて3番手に上がっていた、山本がレクサスコーナーでスピンし、池島も避けようとして姿勢を乱してしまう。これにより、7周目を終えてスタンド前にトップで戻ってきたのは平川。しかも、3秒3もの差をつけた独走状態だ。これを最後までしっかり守り抜いた平川が初優勝を飾り、小山の全勝を阻止することとなった。2位は池島で、3位は初の表彰台獲得となった山本。

萩原友美、星七麻衣、RINA ITO、おぎねぇの順でゴールし、小山は8番手まで挽回するのがやっとだった。「つまらないことで、みんなに申し訳ない」と小山。

 その結果、シリーズランキング2位は平川が獲得し、3位は池島。以下、萩原、おぎねぇ、山本という順になった。

平川真子(優勝)

「今回は展開に恵まれたレースで、でも小山選手と戦っていないので、そこは正直、物足りないんですけど、また一緒のレースに出ることができたら、ちゃんと戦って1番になりたいです。スタートは決まって、1周だけ抑えられたんですが、その後やっぱり抜かれてしまって、後ろの方も近づいてきたので、とにかく抑えるのに必死でした。離れてからはミスせず、自分の走りをするだけだと言い聞かせて、落ち着いて走っていました。(初優勝の気分は?)最高で〜す(笑)。ありがとうございました」

池島実紅(2位)

「もう圧倒的に違うセクターがあって、(小山に)どうやっても追いつかなくて。かろうじて着いていけるぐらいでしかなくて、途中でスピン避けたりとかで、全然ダメで。前回も小山さんに22秒も差をつけられて、今回もどんどん離されていく一方だったので、2位になったとはいえ、なんとも言えないというか……。いつかリベンジしたいです」

山本絵里子(3位)

「正直、4位だと思っていたんです、小山選手がいなくなったのに気がついていなかったから。途中1回スピンもしているし、そういった意味では全然、今イチというか、できることの方が少ない感じなので、もっと練習してうまくなりたいと思います」

 さて、最終戦で3位になった山本だが、KYOJO-CUPに出場する他のドライバーが、オーナーからマシンを貸与されて出場しているのに対し、自らがオーナーである希少な存在でもある。なぜ自らマシンを購入して出場しているのか尋ねてみた。

「VITAに乗り始めたのは去年からで、その前は富士のロードスターカップに1年ぐらい出ていました。KYOJO-CUPができる前から、VITAというクルマがあると聞いて、上手くなれそうなクルマに乗ってみたいと思ったんですよ。それで関心を抱いた時に、KYOJO-CUPができる、FCR-VITAもあるというのを知り、『これ、自分で買ったら、両方出られるんですか』って聞いたら、そうですって言われて、『じゃあ、お得だな』って思って(笑)。現実問題として、KYOJO-CUPに出ている方は名も知られていたり、キャリアもあったりするので、そういう方たちにオーナーさんもついて、そのクルマを貸すっていうのは分かるんですが、私には選択肢として自分で買うしかなかったんです。他にもそういう人はいると思っていたら、あんまりいなかったので逆に驚きました」

 1年目は「周回遅れになったりもしました」と語る山本ながら、そのスキルが確実に向上しているのは最終戦の3位でも明らかだ。その背景として、富士だけではなく、茂木や鈴鹿のレースにも積極的に遠征していることが挙げられる。

「最近になって、ようやく他の人と混じって走れるようなレベルですけど、最初の頃に比べたら。でも、あんまりできたな、と思うことはほとんどない感じです。もともといろんなところを走ってみたかったんですよ。同じチーム(オートルック筑波ガレージ)のいむら(せいじ)さんが、けっこう鈴鹿とか行ってらして、ついでに着いていくというか(笑)。私ぐらいのレベルの人が『あそこも行きたい、ここも行きたい』って言っても、普通は無理だと思うんですよ、お金を払えばいいって話じゃないので。だから、本当にいい環境に恵まれたと思います」

記事:秦 直之さん


KYOJO CUPとは女性だけのワンメイクレース。いわゆるハンディなしの本気の勝負どころである。

VITAを乗りこなすには、本当の走りを学ばなければトップタイムを打ち出すことはできない。ハコと違うのは、レーシングカーというところ。ドライビングの基本を物理的に学ぶことによって、ポテンシャルを最大限に引き出すことができる。

例えプロを目指すわけではなくとも、時間とお金をかけてやるからには本物を操ることがたぶん1番やり甲斐があり、楽しい。

そしてモータースポーツに参加することによって様々な成長も期待できる。

本物の女性ドライバーが育つ舞台、2019年の活躍を楽しみにしたい。