3シーズン目のCS2、そのシリーズ最終戦には10台がエントリー。最大の焦点は、やはりチャンピオン争いだろう。
ランキングトップに立つのは大文字賢浩で、8ポイント差で追いかけるのが柴田隆之介、12ポイント差でFLYING RAT、そして20ポイント差で川島勝彦が続き、この4人がチャンピオン候補である。ただし、FLYING RATは出場せず、また川島は優勝しても、大文字がリタイアでもしない限り逆転は不可能とあって、事実上の一騎討ちとなっている。大文字が自力でチャンピオンになるための条件は3位以上。柴田の優勝を許しても、表彰台に立てば、初代チャンピオンの復権となる。
一方、小山美姫がCS2に初参戦も、話題のひとつ。富士スピードウェイのKYOJO-CUPとFCR-VITAで二冠を獲得した実力を、どう発揮してくれるのか注目された。その小山が練習から絶好調。予選を前に、「期待していてください」と語っていたが、期待以上の走りを見せてくれた。
#29 小山 美姫 選手 #10 柴田 隆之介 選手
予選では計測2周目に2分13秒台に入れて、あっさりとレコードタイムを小山は更新。だが、その後トラフィックに苦しんだため、ターゲットとしていた2分12秒台に入れられなかったものの、それでも新たなレコードタイム、2分13秒086をリストに記すこととなった。
一方、逆転に一縷の望みを残す柴田は2番手につけるも、2分14秒441で小山に1秒3もの差をつけられ、「ターゲットの大文字さんは抑えられたけど、小山選手にぶっちぎられたのが悔しくて。僕も13秒台は狙っていたけど、出ても真ん中ぐらい。フラットなんて、どうやっても」と語っていたのに対し、
#3 大文字 賢浩 選手 #16 松本 吉章 選手
大文字はどっしり構え、「なんだかすごいのが出てきちゃったね。マークするのは龍之介だけなんだけど、(小山は)すごいわ。走りがきれい。着いて行ったら、特別なことしていないのに、どんどん離されちゃうような感じでした。それでもおじさん、頑張ります!」と語っていた。
#12 金久 憲司 選手 #7 川島 勝彦 選手
#22 東 督也 選手 #19 伊藤 豊 選手
#6 臼井 卓士 選手 #11 LIU-I-HSIN 選手
「なんでそんなに早いんや?」と、CS 2ドライバーも興味津々!
小山美姫(ポールポジション)
「コースレコードが13秒6だったので、それは絶対超えたくて。でも、12秒台に入れたかったんです、この時期なので。引っかかっていなかったら、入ったでしょうね。けっこう攻め過ぎて、スピンしそうになっていたから、決勝はにちゃんとまとめて、枠からはみ出さないように(笑)。今シーズン最後のレースは、先週の悔しさもあるので、いい形で終わりたいと思います」
予選同様、決勝レースも天候に恵まれて、さわやかなコンディションの中での走行となった。日曜日の第1レースとしてグリッドにマシンが並べられた後、集合写真の撮影が行われ、和やかな雰囲気からのレース開始に。
スタートからの蹴り出しは良かった小山ながら、その後の加速が鈍って、いったんは3番手にまで後退してしまう。代わってトップに立ったのは大文字で、これに続いたのは柴田。それでもオープニングラップのうちに柴田をかわしていた小山ながら、大文字との間隔は2秒5にも。だが、厳しいと思われていた差を、わずか1周で取り返して大文字の真後ろにつける。
そして4周目の1コーナーで、小山は大文字を抜いてトップに浮上!
抜かれたからといって気落ちしたわけではなかろうが、その周のデグナーで大文字はスピンを喫し、5番手に順位を落としてしまう。次の周には1台をかわした大文字ながら、それ以上の上昇はならず。
しかし、柴田が2位に留まったこともあり、大文字は王座返り咲きを果たすこととなった。
3位でゴールは松本吉章。
そして、最後は10秒差での圧勝となった小山は、CS2のデビューウィンを達成。またひとつ、新たな金字塔を打ち立てることとなった。
小山美姫(優勝)
「スタートは悪くなくて、蹴り出しは良かったのに、その後の加速が鈍ってしまって。原因は分からないんですが。それでも3周でまたトップに立てて、最終ラップにはファステストラップを狙っていったんですが、(バックマーカーに)引っかかってしまって出せなかったのが、ちょっと残念です。CS2はVITAを大きくしたような感じで、ステップアップカテゴリーとして、ちょうどいいと思いました。VITAで基礎を学んで、乗りこなせるようになれば、同じような感覚でCS2も走れるでしょう。楽しかったです。何よりスッキリ終われました、本当に!」
大文字賢浩(チャンピオン)
「かっこ悪いチャンピオンの獲り方でした(苦笑)。でも、年間通じたら、良かったと思います。ただ、美姫ちゃんがもっと早い時期に出てくれたら、もっと勉強できたのにな、とも。お山の大将みたいな感じで。もうちょっと練習しないといけないですね。(小山に)ついて行ければ良かったんだけど、回っちゃったのも情けない。昨日とは前後のタイヤ入れ替えたんですが、それでバランスを、かえって悪くしちゃったっていう理由もあるんですけどね」
記事: 秦 直之さん
小山 美姫 選手
今回の走りを見て、レーシングカーの走りを殆どマスターしているドライバーだと感じました。
女性でも男性に勝るテクニックは問題なく習得出来ると思います。
ハンディは体力と精神力だけ。それらをトレーニングでどこまで克服できるかが大きなポイントになります。小山さんはそれらを本気で乗り越えようと頑張っている、本物の女性ドライバーだと今回感じました。現在21歳、今後の成長を楽しみに応援したいと思います。 kamiko@